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新井 太貴*; 吉越 章隆; 本橋 光也*
材料の科学と工学, 60(5), p.153 - 158, 2023/10
現在、Si酸化膜は絶縁材料として電子デバイスや生体材料に広く利用されている。この膜の原子結合状態は、各デバイスの特性に影響を与えるため、特に膜のSiとOの化学結合状態の理解と制御が必要となる。本研究では、極低濃度のHF水溶液を用いた陽極酸化によってSi基板表面に形成されるSi酸化膜をX線光電子分光によって分析した。Si2pおよびF1sスペクトルを中心に調べた。HF濃度がppmオーダであるにもかかわらず、膜表面にパーセントオーダのFを含んでいることがわかった。膜中にSi-FやSi-O-F結合が形成されたことを示唆する結果である。また、FとOの深さ分布が異なることから、FとOで表面反応プロセスが異なることが推論された。
高山 裕介; 山本 陽一*; 後藤 考裕*
地盤工学ジャーナル(インターネット), 18(3), p.317 - 330, 2023/09
Na型ベントナイト・砂混合土に対する約1.8年の長期の圧密試験により、二次圧密過程の変形が加速的に増加する傾向が報告されている。そこで、このような二次圧密の加速挙動が生じた要因の分析を行い、それらの要因に対する対策を試験装置に施し、ベントナイトやカオリナイトを用いた10年以上を想定した長期圧密試験を開始した。本研究では、長期圧密試験開始から約2.74年経過時までの試験データに基づき、ベントナイトの二次圧密特性を調べた。その結果、試験開始から約2.74年の計測期間では、時間の対数に対して直線的に二次圧密が進行するという従来の粘土に対する知見と概ね整合的な結果が得られた。今後も試験期間が10年程度以上となるまで試験を継続し、ベントナイトのより長期的な二次圧密特性について調べていく予定である。
中村 孝史*; 山本 幸男*; 荒川 正和*; 丸山 晃生*; 吉越 章隆
産業応用工学会論文誌, 11(2), p.109 - 114, 2023/09
SPring-8のBL23SUに設置された表面化学実験ステーションは、放射光軟X線を使って様々な機能性材料の表面および界面の研究に利用されている。固体表面とガスとの化学反応の理解を進めるためには、ガスの精密流量制御が必須である。本論文では、超高真空(分子流領域)におけるガスと表面の反応の実験精度および再現性を改善するための自動ガス流量コンピュター制御システムを報告する。ガス圧力制御のために、スローリークバルブのフィードバック制御システムを開発した。開発したシステムによって、装置エキスパートの実験者と同等以上の反応実験が可能となった。
堂田 哲広; 中峯 由彰*; 桑垣 一紀; 浜瀬 枝里菜; 菊地 紀宏; 吉村 一夫; 松下 健太郎; 田中 正暁
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 28, 5 Pages, 2023/05
高速炉を含む革新炉のライフサイクルを自動的に最適化する「AI支援型革新炉ライフサイクル最適化手法(ARKADIA)」の開発の一環として、高速炉の概念設計段階の最適化をサポートするARKADIA-Designを開発している。ARKADIA-Designは、3つのシステム(仮想プラントライフシステム(VLS)、評価支援・応用システム(EAS)、知識管理システム(KMS))で構成され、設計最適化フレームワークが各システムのインターフェースを通じて3つのシステム間の連携を制御する。本稿では、VLSによるプラント挙動解析とEASによる最適化検討を組み合わせた設計最適化解析を実行する「最適化解析制御機能」の開発について報告する。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 朝比 祐一; 稲垣 厚至*; 下瀬 健一*; 平野 洪賓*
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 28, 4 Pages, 2023/05
我々の研究グループでは、都市全域を含む広域の風況場から細かな路地等を捉えたマルチスケールの風況シミュレーションコードCityLBMの開発を進めている。CityLBMは、格子ボルツマン法に適合細分化格子を適用した省メモリ化、および、GPUスーパーコンピュータによる高性能計算により、数km四方に対してリアルタイムのアンサンブルシミュレーションが可能となる。一方、実現象には、モデル化できない複雑な境界条件が含まれているため、観測データをシミュレーションに反映させるためのデータ同化技術が必要である。本研究では、現実の風況を再現するために、アンサンブルカルマンフィルターに基づく地表面温度バイアスの最適化手法を提案した。CityLBMの検証として、東京都心部を対象とした観測システムシミュレーション実験を実施し、地表面近傍の温度から、境界条件として与えている地表面温度を推定する。
小林 謙祐*; 安江 歩夢*; 諸岡 聡; 兼松 学*
コンクリート工学年次論文集(DVD-ROM), 44(1), p.208 - 213, 2022/07
異形鉄筋の表面形状がコンクリートとの付着性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、引抜試験および中性子回折法による鉄筋応力測定を実施した。実験結果より、引抜試験における付着応力-自由端すべり量曲線では、表面形状の違いによって大きく異なる結果となった。一方、鉄筋応力の測定では、各水準の応力分布に差異は見られなかった。したがって、鉄筋に自由端すべりが生じる条件下においては、鉄筋の表面形状が付着性能に影響を及ぼすことが推察された。
長谷川 雄太; 小野寺 直幸; 朝比 祐一; 井戸村 泰宏
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 27, 4 Pages, 2022/06
局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)および格子ボルツマン法(LBM)を用いたアンサンブルデータ同化のGPU実装を行った。D2Q9 LBMによる二次元等方性乱流を対象として、最大32アンサンブルで性能測定を行った。LETKFの計算コストは、8アンサンブルまででLBMと同程度であり、それ以上の大アンサンブル数においてはLBMよりも高くなった。32アンサンブルにおいて、1同化サイクルあたりの所要時間はLBMで5.39ms、LETKFで28.3msであった。これらの結果から、3次元LBMの実用計算に本手法を適用するためにはLETKFの更なる高速化が必要であることが示唆される。
杉原 健太; 小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 山下 晋
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 27, 5 Pages, 2022/06
フェーズ・フィールド法は気液界面の追跡手法として様々な多相流問題に適用され、成功を収めている。しかしながら、フェーズ・フィールド法の精度は、問題に応じて経験的に調整されたハイパーパラメータに依存する。フェーズ・フィールド法は移流項の数値粘性と拡散・逆拡散項による界面修正のバランスによってシャープな界面を維持する。この点に着目し、界面移流の基本的な誤差解析を行うことによって非経験的に最適なハイパーパラメータを決定する手法を提案する。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 下川辺 隆史*; 青木 尊之*
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 27, 4 Pages, 2022/06
我々の研究グループでは、風況デジタルツインの実現に向けて、風況解析コードCityLBMを開発している。CityLBMは、計算領域周辺の境界条件をメソスケール気象データに同化させるナッジング法を導入することで、現実の風況を反映した解析が可能である。しかしながら、従来のナッジング法では、ナッジング係数が一定のため、大気状態が変化するような長時間解析の乱流強度を再現できない問題点が挙げられる。そこで、本研究では、パーティクルフィルタを用いた動的なナッジング・パラメータの最適化手法を提案する。CityLBMの検証として、米国オクラホマシティの風況実験に対する解析を実施した。シミュレーションと観測のそれぞれで得られる乱流強度の誤差を低減するようにナッジング係数を更新した結果、シミュレーションにおいて終日の大気境界層を再現できることを確認した。
朝比 祐一; 小野寺 直幸; 長谷川 雄太; 下川辺 隆史*; 芝 隼人*; 井戸村 泰宏
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 27, 5 Pages, 2022/06
都市風況解析コードCityLBMをAMD社のMI100 GPUへと移植し、CityLBMの性能をNVIDIA P100, V100, A100およびAMD MI100において測定した。ホスト間でのMPI通信を利用した場合、CityLBMの性能はMI100においてV100と比べ20%程度向上した。適合細分化格子法に起因する補間カーネルを除く演算カーネルでは、MI100においてV100と比べ性能向上を確認した。
堂田 哲広; 中峯 由彰*; 井川 健一*; 岩崎 隆*; 村上 諭*; 田中 正暁
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 27, 6 Pages, 2022/06
高速炉を含む革新炉のライフサイクルを自動的に最適化する「AI支援型革新炉ライフサイクル最適化手法(ARKADIA)」の開発の一環として、高速炉の概念設計段階の最適化をサポートするARKADIA-Designを開発している。ARKADIA-Designは、3つのシステム(仮想プラントライフシステム(VLS),評価支援・応用システム(EAS),知識管理システム(KMS))で構成され、設計最適化フレームワークが各システムのインターフェースを通じて3つのシステム間の連携を制御する。本稿では、VLSの解析コードを連成する制御機能を備える「VLSインターフェース」の開発状況について報告する。
市原 義孝*; 中村 尚弘*; 飯島 国彦*; 崔 炳賢; 西田 明美
構造工学論文集,B, 68B, p.271 - 283, 2022/04
本論文は、振動数に依存しない複素減衰を用いた鉄筋コンクリートの等価線形解析法の原子炉建屋の耐震設計への適用性を評価することを目的とする。そのため、理想的な地盤条件での原子炉建屋の非線形及び等価線形地震応答に着目して、地盤-建屋連成系の三次元FEM解析を実施した。その結果、等価線形解析結果は非線形解析結果と概ねよく整合し、その有効性を明らかにした。さらに、今回の等価線形解析法は、非線形解析モデルと比較して、構造の剛性を低めに評価する傾向があった。このため、最大せん断ひずみの評価では、非線形解析の結果よりもひずみの値が大きくなる可能性が高いことに留意する必要がある。
高山 裕介; 菊池 広人*
土木学会論文集,C(地圏工学)(インターネット), 77(3), p.302 - 313, 2021/09
放射性廃棄物の地層処分施設の緩衝材への利用が検討されているベントナイトの膨潤特性を把握するため、これまでに数多くの膨潤圧試験が実施されてきた。本研究では、膨潤圧試験でしばしば観測される飽和に至るまでの過程で一度膨潤圧が低下する現象の原因を明らかにするため、X線CT測定による膨潤圧試験中の供試体内部の観察により、膨潤圧の経時変化と供試体の状態変遷の関係の把握を行った。その結果、膨潤圧が一度低下する期間において、供試体内部で吸水圧縮挙動が生じていることが観測され、これにより膨潤圧が低下したものと推測された。さらに、複数の異なる荷重条件に対して膨潤変形試験を実施した結果、膨潤圧と同等からやや小さい荷重条件においても、飽和に至る過程で圧縮挙動が生じることが確認された。これらの試験データは、再冠水時の処分施設の力学的な状態変遷を評価するための連成解析コードの検証のためのデータとしての活用が期待される。
大場 恭子
工学教育, 69(5), p.95 - 98, 2021/09
日本原子力学会の技術者倫理教育について、本学会の倫理委員会の任務の例示や、最近のトピックスを紹介しながら、これからの技術者が持つべき能力・感性について述べた。
長谷川 雄太; 青木 尊之*; 小林 宏充*; 井戸村 泰宏; 小野寺 直幸
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 26, 6 Pages, 2021/05
Forest-of-octreesに基づく局所格子細分化法(LMR)を導入した格子ボルツマン法(LBM)に基づく空力解析コードに対し、挿し木法による領域分割の改善手法を提案した。従来の空間充填曲線に基づく領域分割法は、適合格子細分化法(AMR)やLMRで広く用いられているものの、GPUスパコン向けに実装された本空力解析コードにおいては袖領域通信が増大し計算のボトルネックとなるうることが確認された。本研究で提案する挿し木法は、粗い等間隔格子状の領域分割と細かい空間充填曲線に基づく分割のハイブリッドによる手法である。挿し木法により、領域分割の局所性と幾何形状が改善しており、通信量が従来の空間充填曲線に基づく手法に比べて3分の1に削減された。8GPU並列による性能検証では、コード全体で1.23倍の高速化が確認された。また、強スケーリングにおいてさらに性能の改善が見られ、128GPUの強スケーリングにおいては、従来手法に比べて1.82倍の高速化を示し、2207MLUPS (mega-lattice update per second)の計算性能を達成した。
松下 健太郎; 藤崎 竜也*; 江連 俊樹; 田中 正暁; 内田 真緒*; 堺 公明*
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 26, 6 Pages, 2021/05
ナトリウム冷却高速炉の冷却材自由液面部におけるガス巻込み渦について、数値解析によりガス巻込み量を評価する手法を開発している。本研究では、計算負荷を抑制し、かつ渦形状の予測精度を確保した解析メッシュの自動作成手法を調査し、その手法としてadaptive mesh refinement(AMR法)を非定常後流渦の体系を対象にすることによって検討した。メッシュ詳細化の基準として渦度、速度勾配テンソルの第二不変量(Q値)および速度勾配テンソルの固有方程式の判別式について検討し、Q値によるAMR法の適用がもっとも効率よく解析メッシュを詳細化できる見通しを得た。
堂田 哲広; 上羽 智之; 根本 俊行*; 横山 賢治; 田中 正暁
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 26, 4 Pages, 2021/05
高速炉の設計最適化に向け、従来の設計解析では考慮できなかった炉心温度上昇時の炉心の熱変形によるフィードバック反応度を考慮するため、核-熱-構造連成解析法を開発した。本手法では、核特性,プラント動特性,構造力学の各解析コードをPythonスクリプトの制御モジュールを用いて連成させる。本稿では、本連成手法と実プラント試験へ適用した結果について概説する。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 下川辺 隆史*; 青木 尊之*
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 26, 3 Pages, 2021/05
本研究では、二相流体解析コードJUPITER-AMRに対して、圧力ポアソン方程式に対する混合精度前処理手法を開発した。マルチグリッド前処理手法として、3段のVサイクルの幾何学的MG法およびキャッシュを再利用したSOR(CR-SOR)法を適用した。原子力工学問題での性能測定として、バンドル体系に対する多相流体解析を実施した。計算速度として、単精度演算を適用する事で、倍精度演算の75%へと削減すると共に、強スケーリング性能においては、32台から96台のGPUを利用する事で1.88倍を実現した。
朝比 祐一; 畑山 そら*; 下川辺 隆史*; 小野寺 直幸; 長谷川 雄太; 井戸村 泰宏
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 26, 4 Pages, 2021/05
多重解像度の定常流流れ場を符合付き距離関数から予測するConvolutional Neural networkモデルを開発した。高解像度の画像生成を可能とするネットワークPix2PixHDをパッチ化された高解像度データに適用することで、通常のPix2PixHDよりメモリ使用量を削減しつつ、高解像度流れ場の予測が可能であることを示した。
大場 恭子; 吉澤 厚文*; 北村 正晴*
工学教育, 69(3), p.3 - 10, 2021/05
技術者倫理教育は、技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、および技術者の社会に対する貢献と責任に関する理解することを目的に行われている。そのため、技術者を取り巻く問題を学生がより理解しやすいように、事例を用いた教育方法が行なわれている。しかしながら、扱われている事例のほとんどは、技術者が安全を実現できなかった失敗事例となっている。一方、人間工学の分野では、人の失敗(ヒューマンエラー)や組織文化に事故原因を求め再発防止を図る安全対策への批判から、レジリエンスエンジニアリングという手法が提案され、以後、その研究や実践が行なわれている。このレジリエンスエンジニアリングの特徴には、安全の概念を拡張した上で、人を危険なシステムのなかで安全を実現している存在として捉えていることと、そうした安全概念を拡張したからこそ注目できる良好事例の分析がある。本論文は、今まで失敗事例を中心に行われてきた技術者倫理教育の改善に、レジリエンスエンジニアリングの考え方を活用で、技術者倫理教育が改善できることを示した。